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大西恵 個展 「閾」
【大西恵 個展 「閾」】
会期:2021年3月2日(火)〜3月7日(日)
時間:12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
展示会場:ギャラリー
これまで様々な作家が、女性のヌードをそれぞれ思い思いの美の形で表現してきた。
ギリシャ神話の女神のような神秘的なヌード、個人的な視点でのヌード、装飾としてのヌード…何の疑いも無くヌードを美の象徴として用いてきた。
しかし実際の女性の身体が、その様な美しいものとは私には思えない。それらのヌードは、男性目線の男性が理想とする男性優位の幻想の女性像である。そこには女性の目線は全く入れられていない。
また私たちは、現実社会でもこの様な幻想を押し付けられている。誰もが、あるいは私自身も、知らない間にそれが当たり前だと信じ、また別の同性に、異性に、幻想を押し付ける。
私の作品の裸の女性は、私がイメージする女性の身体、ネイキッドとしての裸体である。
世の中が思い描いている女性の裸体と比較すると、かなり醜く滑稽な姿に見えるだろう。
まず私の作品を他者がみたとき、一番目に飛び込んでくるのが女性器(ヴァギナ)ではないかと思う。それも当然、なぜなら性器はポルノであるからだ。
性器は目や鼻等と変わらないただの身体の一部分であるが、普段は服を着て隠している。それを露にする時は、排泄の時、風呂に入る時、医者に診てもらう(病気、出産等)時、性行為の時と、極めてプライベートな場所、シチュエーションである。なので、性器を公で見せる時はまず無く、そういった事があればポルノとして扱われる。
私が描いているのは、あくまでもこのただの身体、ネイキッドとしての身体・性器であるが、やはりそれも他者の目を通す事により、ポルノとして見られる事は避けられない。
この行為が世の中からすればタブーであり特殊な事であり、またこの行為に人は私を好色として見るだろうと思う。しかし、だからこそ、私は女性器を通して自分の主張を世の中に叫んでいるのだ。
作中で中心的に描いている裸の女性、又は女性器が私自身の隠喩であるのに対して、それ以外のモチーフはこの社会を隠喩している。なので、問題としているテーマによって描いているものは変化する。取り上げているテーマの主は性に関わる事柄である。それは私が人一倍性に対して執着があるからである。だから自分自身の隠喩として裸の女性像を用いる必要があるのだ。
そんな裸の女性ともう一つ、くり返し描いているモチーフがある。それが日本家屋である。私にとって日本家屋は、幼い頃から馴染みがある場所というよりも、記憶の奥底に存在する原点のものなのである。それは私が作中で描いているネイキッドの裸の女性像と同じ、基盤のモチーフなのだ。
また背景を、襖や壁や畳や敷居で漫画のコマ割りのように囲い区切る事で、場面や時間の変化を表している。性への感情は、自分を取り巻く環境や社会、自分以外の人間(他人)との関わりによって、移り変わるものである。全く性を知らない子供の時代から、身体が成長し、だんだん大人になっていき、性別というもので区別される。異性を意識し、気がつけば社会が作り上げた幻想の女性像を押し付けられている。それにどれだけ抵抗しても、月に一度の生理で自分が女である事を実感する。なぜならば、女性器や生理は世の中が作り上げた女性像ではなく本質の女性像だからである。
私は性の問題に直面することが多くある。それは現代がそう思わざるを得ない社会であるからなのと、私が敏感に性を認識してしまうからである。社会に対して私が何を考え思っているか、あとなぜこれ程まで私が性に執着しているか、その心理を知るため私は作品を作っている。
〈大西恵 / Onishi Megumi〉
1983年10月24日生まれ
2002/3 京都成安高等学校 普通科美術コース 卒業
2002/4 成安造形大学 造形学部造形美術科造形表現群構想表現クラス 入学
2006/3 成安造形大学 造形学部造形美術科造形表現群構想表現クラス 卒業
活動歴
2003/9
展覧会名/ コンテナ・ギャラリー学生公募展2003「大西恵個展 はこのかんづめ」
場所/ 成安造形大学 コンテナ・ギャラリー(滋賀)
2004/3
展覧会名/ SHOWCASE 「大西恵展・The Left Bicycle Project」
場所/ CAP HOUSE ギャラリー山側(兵庫)
2006/2
展覧会名/ 湖族の郷アートプロジェクト
場所/ 滋賀県堅田地域(滋賀)
2007/5
展覧会名/ 「大西恵個展 暴楽園」
場所/ 立体ギャラリー射手座(京都)
2007/10
展覧会名/ 構想表現企画展④「ファッション?〈衣の異変〉」
場所/ 海岸通ギャラリー・CASO(大阪)
2017/2
展覧会名/ 「大西恵個展 アラズモガナ」
場所/ 同時代ギャラリー(京都)
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大西恵による個展。同時代ギャラリーでは2017年の個展以来、2度目の開催となります。
著しく性器をあらわにした裸の女性が描かれた作品はどれもインパクトが強く、圧倒されてしまいます。それぞれの作品には様々な意味が込められています。例えば女性の近くにみられる人物の手足やバナナの皮などのモチーフは、突如として巻き込まれる性犯罪、そしてその被害者に責任を追求するような風潮に対して感じた実態のない恐怖を表しているのだそうです。
全てが厳粛なイメージで描かれているかと思いきや、入れ歯が転がっている様子など何処となく喜劇的な要素もあります。怖さや不穏な雰囲気の中に所々滑稽さも感じられる作品、ご高覧ください。