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2021.11.02
展覧会アーカイブ, ギャラリービス展示
吾郷佳奈 個展「をちこちのここのとこ」
吾郷佳奈 個展「をちこちのここのとこ」
2021.11.2-11.7
12:00-19:00 (最終日は17:00まで)
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今週のギャラリービスでは、作家・吾郷佳奈による個展「をちこちのここのとこ」を開催しています。
同時代ギャラリーでは1年ぶりの個展。昨年は「鏡」を使った作品を展示しています。
(展示アーカイブはこちら→ https://youtu.be/JTR0HnP535I )
タイトルの「をちこち」はモノの本によると、漢字では「遠近」、「彼方此方」と書き、場所を指す「あちらこちら」もしくは時制を指す「現在と将来」の意味があります。
「最近のこと」や「ここのとこ」の意味を表せる日本語がないかと考えていたら響きが可愛らしいこのタイトルに行き着いたとのこと。
コロナ禍になってからというもの、存在が当たり前になってきている「アクリル板」や「ビニール」。私たちはその透明な壁を挟んで誰かとやりとりをしています。
「自画像」の描き方や素材を探り、制作を続ける吾郷さんにとって、ここ最近日常に突如割り込んできた「透明な壁」は制作面において非常に画期的な素材でした。
今回の個展では、アクリル板へのドローイングだけではなく、ビニールを通した自画像の油彩画やビニールカーテンへのドローイングを展示。
会期中は毎日在廊いただき、会場の大きな鏡に来場いただいた方や会場を描くライブドローイングも行います。
コロナ禍という非日常から生まれたマテリアルをポジティブに捉えた作品の数々、吾郷さんと私たちの「あちらこちらのここのところ」をぜひご高覧ください。
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あちらこちらに、わたしたちを隔てる透けたもの。
今となっては街中にありふれたものになった透明な膜越しの風景は、透ける素材を好んで作品に取り入れてきた私にとって、とても目を奪われるものでした。その膜によって、あちらとこちらの境界が可視化されているようで、不思議に思うのです。
感染防止のためのパーテーションなどに透けるものを用いていることに、私は断絶へのささやかな抵抗を感じます。その壁は人々を隔てるものでもあるけれど、誰かが隣にいることが分かるものでもある。隣り合う繋がりをかろうじて繋ぎ止める命綱のようにも思います。
今回の展覧会では「ここのところにおけるわたし」を軸に、最近の風景として見慣れつつあるアクリル板やビニールを用いて、透明な境界で分けられた両面をひとつの平面にすることを試みます。また、日々を膜越しに捉えた絵画によって「わたし」を描きます。会期中には来場者や展覧会場といった「わたし以外」をモチーフに、ライブドローイングを行います。
複雑に絡み合った状況の輪郭線を、私の中のいくつかの視点による解釈で探ります。
あちこちの日常のなかの一つとしての、わたしの最近のところです。
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吾郷佳奈
Kana AGO
1993 年島根県出雲市生まれ。現在、京都在住。2016 年京都市立芸術大学 美術学部 油画専攻 卒業。2018 年京都市立芸術大学大学院 美術研究科 絵画専攻 油画 修了。
主な展覧会に、個展「エンドレス」(同時代ギャラリー コラージュプリュス、京都、2020 年)、「こえる、境界線」(no-mu / studio 10 ㎡、京都、2020 年)、吾郷佳奈・山田千尋「おひろめ」(Powder plant、京都、2019 年)、2017 年個展「花とコンパス」(trace, 京都)など。
アクリル板、鏡、油彩、布など、あらゆる素材や技法を用いて「自画像の方法」を探っています。自他の境界をなぞり、重ねることで、不明瞭なわたしの輪郭線が、朧げながらも見えてくることに期待しながら作っています。
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御幸町からの入り口。
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会場では吾郷さんの作品集も販売。
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ライブドローイングの様子。
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ビニールにドローイングをしたり、「ビニールを通して何かを見る」、新しい「絵画」を観客に提示した吾郷さん。鏡を密に埋め尽くす人々のライブドローイングも、何かを間に挟んだ人と人との距離感や「をちこち」の距離感を私たちに提示するものだったのではないかと思います。
吾郷さんとの1週間、楽しかったです。